次なる通貨危機は中国発か?はたまたMalaysia発か?

2017年1月9日(月) No.932

2016年のMalaysiaのDengue Fever(デング熱)感染件数は、101,357件で、2015年の120,836件比▲16.1%となった。死者数は237人で、2015年の336人比▲29.5%となった。減少が何らかの対策の成果なのか?或いは単なる気象変化による影響なのか?分析の結果を求め次なる対策を講ずる必要もあろう。

今回は、“次なる通貨危機は中国発か?はたまたMalaysia発か?”です。

今尚外貨準備不足で、国際的な経済・通貨危機の引き金になりかねない国家が存在することを、肝に銘じておく必要がある段階だ。1997年7月Thai Bahtの暴落を皮切りに各地に燃え広がったAsia通貨危機の勃発から20年、当時もマネーが株高の米国に猛烈な勢いで還流、外貨準備不足に陥った国家が次々と投機筋の空売り攻勢に屈し、瞬く間にThailand、Indonesia、韓国の3ケ国がIMFの管理下に入った。今の世界の資金の流れは当時とそっくりだ。米国金利の先行上昇→米国への資金の還流→US$の一人高。

当時MalaysiaはMahatir首相の下、株の売却を一時停止させ(これは短期間で解除)、為替対策としてRinggit売り換金を停止し、日本に還流する資金は一年間留め置かれた。

今回IMF(国際通貨基金)が米国大統領選以前に纏めた試算で外貨準備が最も払底しているのは何とMalaysiaだ。昨年末の外貨準備高がUS$1,000億(約12兆円)と予想されるのに対し、短期の対外債務がUS$1,282億(約15兆円)もあり、赤字転落リスクに直面しているという。現在、抵抗力の弱さが際立っているのはMalaysiaで、次いでTurkey、MexicoといったG20諸国も脆弱だ。

実際、Malaysia中央銀行は、同国通貨Ringgit安に歯止めをかけようと躍起だ。先月5日には、同国企業が輸出で獲得した外貨の75%以上のRinggitへの両替を義務付ける規制(外貨売りRinggit買いを強制させ通貨安を止めようという施策)と、居住者がRinggitを借りて外貨建て資産を購入する際の上限をRM5,000万(約12.8億円)とする規制を導入した。それでも対US$比の通貨安は止まらず先週4日にはRM4.49502の安値を付けてしまった。

これらは、Ringgitが米国大統領選でのTrump氏勝利後、対US$でAsia通貨中最大の水準(5%超)の下落を記録したことへの対応策だ。Ringgit安防止のためのUS$売り介入の原資の確保と、Ringgitの流出予防を謀ったのである。果たしてMalaysiaは通貨危機に見舞われるのか?通貨暴落は?

だがそれにもまして通貨危機が危険な極めつけの国がある。しかも世界に及ぼす影響度はMalaysiaどころの騒ぎじゃない、世界を震撼させかねない。中国だ。
中国の中央銀行である「中国人民銀行」によると、中国の11月末の外貨準備高は前月末よりUS$691億減ってUS$3.0516兆(約350兆円)に縮小した。ピーク時には約US$4兆を誇ったが、それから僅か2年半弱で、節目とされるUS$3兆割れがいよいよ秒読みとなってきた。

中国は外貨準備高の発表に合わせて、国家外貨管理局が12月7日、異例の外貨準備高の減少要因の分析を発表、Trump氏が米大統領選に当選後、”元”が他の新興国通貨と同様に対US$で下落する中で、人民銀がUS$売り・”元”買いの為替介入を実施したことで外貨準備が減少したと釈明した。
中国当局は、中国から流出する資金の抑制に躍起で、為替介入だけでなく、US$500万を超える海外への送金や両替を事前審査制にする措置を講じた。この措置には、中国に拠点を持つ邦銀からも悲鳴が上がっている。
それでも国民の感覚は鋭く、”元”売りが殺到中で、当局は介入用の”元”を用立てる為に米国債の売却に暇がなく、米国債保有残の急減も著しいが、それでも通貨安は止まらない。当局の”元”買い介入で市中の”元”資金が減少し、短期金利の急騰が著しくこれが借入企業の資金繰り悪化を招いている。財務悪化で何時倒れてもおかしくない企業が何と多いことか。
中国の日本人駐在員の悲話として、人事交代の為に帰国指示が出された駐在員が、大手中国工商銀行で溜まった給与残を日本へ送金しようとした処、凍結されて送金はおろか引き出しも出来ぬまま1,000万円程の残を放置したまま日本へ帰国せざるを得なかったことが報じられた。銀行の窓口行員は、「日本の生活費に必要なら、その為に必要だという証明書を野菜屋でも肉屋でも魚屋からでも貰ってこい」と言い放ったそうだ。

Malaysiaが先か、中国が先か、チキンレースを催してきている。Longstayをしている私はどうすれば良いのだ。US$の一人勝ちはかなり進んでしまっているし、日本円もMalaysia Ringgitも弱いし、ユーロはもっと不透明だ。頭が痛い。本来なら最も安いものに資金投入するのだろうが、この場合はMalaysia通貨だ。かと言って通貨危機に見舞われてインフレ急騰しようものなら、Malaysia通貨だけでは対応しきれない。預金者を切り捨てることはないだろうが。

次回は、“医療費の高騰情報”です。

 

ペナンの日々 について

Longstayer in Malaysia
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次なる通貨危機は中国発か?はたまたMalaysia発か? への3件のフィードバック

  1. ハリー ペナン より:

    いつも示唆に富むブログ楽しみにしております。今回はショッキングな解析ですね。現役時代アジアやブラジル危機等を通過して来たので息を飲みます。為替リスクは神のみぞ知ると言いますが、次の危機はと身構えてしまいます。EUの崩壊やトランプ発の危機も頭をよぎります。何が起こってもリンギットはただでは済みませんね。ところでその後、指の具合はいかがでしょうか。くれぐれもお大事にして下さい。

    • 指への御配慮ありがとうございます。ネットで調べる限り、4段階中、第三段階に入りつつあるようです(第一段階は全く気付かないことが多いようです)。自然に元通りになることはなく、進行した際には手術するしかないようです。左手でキーを打っていますが、もどかしさと慣れない感覚とで遅々として進みません。ゴルフをする人、ピアノを弾く人、パソコンを前にキーを長時間叩く人、色々患う人がいるようです。私の様にならないようお気をつけて下さい。
      通貨については頭が痛く、米国勤務経験で米国の年金を少しでも貰える人が羨ましいです(知人にいるのですが)。

  2. ハリー ペナン より:

    それにしてもご不自由ですね。一刻も早い回復をお祈り申し上げます。私の場合ゴルフエルボウと言うひじ痛で、数カ月前にステロイド注射を打って痛みを止めしましたが、少し無理をすると再発します。老化は現実ですので若い頃の様に鍛えて治すのは無理ですね。だましだまし使っています。米国年金はドルベースですから良いですね。

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